2025年5月、埼玉県と名古屋市が制定した「エスカレーター立ち止まり条例」は、エスカレーターでの事故防止を目的に始まりました。
特に名古屋市では「なごやか立ち止まり隊」と呼ばれる“通せんぼの人”がエスカレーター右側に立ち、歩行を防ぐ取り組みを実施しています。
これにより、混雑時の転倒事故防止や安全利用の啓発が進められています。
ユーザーの知りたい心理としては、「通せんぼの人って何?本当に効果はあるの?日給1.6万円は妥当なの?」という疑問が根底にあります。
- 「通せんぼの人」とは何者か、その目的や活動内容
- 埼玉県や名古屋市で進む「立ち止まり条例」の背景
- 過去の類似施策とその成果、課題
- 安全啓発の新たな手法としての可能性
通せんぼの人とは?具体的な活動内容・1日の流れ・服装

通せんぼの人(なごやか立ち止まり隊)の具体的な活動内容
「なごやか立ち止まり隊」は、名古屋市がエスカレーター事故防止のために採用した啓発要員で、以下のような活動を行っています。
- エスカレーター右側(関東では左側)に立つ:通常、エスカレーター利用者が歩く側に立ち、通行を防ぎます。これにより「立ち止まる文化」を浸透させることが目的です。
- 声掛け・指示:場合によっては「歩かないでください」「ここは立ち止まりましょう」と声をかけることもあります。
- 啓発掲示物の設置:ポスターや立て看板を持ったり、胸元に「立ち止まり推奨中」のプレートをつけることもあります。
通せんぼの人の1日の流れ
「なごやか立ち止まり隊」の1日は次のような流れで進みます。
- 集合・準備(開始前30分~):活動する駅に集合し、ユニフォームやプレートを着用。指導担当者からその日の役割説明を受ける。
- 持ち場に立つ(開始時間):エスカレーター右側に立ち、後ろの人が通れないよう体勢をキープ。
- 休憩時間(1~2時間ごとに短めの休憩):駅によっては人通りが多いため、適度な休憩が設けられます。
- 啓発活動再開:立ち止まりの呼びかけ、掲示物の調整を行う。
- 終了・撤収(6時間後):終了後、使用した掲示物やユニフォームを返却し、活動報告を提出。
通せんぼの人の服装・持ち物・立ち位置
- 服装:目立ちやすいベスト(「立ち止まり隊」や「安全推進」と書かれているもの)、名札、胸に啓発プレートを着用。
- 持ち物:場合によってはメガホンや旗を持ち、注意喚起を促進。
- 立ち位置:エスカレーターの右側(関東では左側)。特に駅の混雑時間帯(朝夕ラッシュ時)に立つことで、歩行者の流れを止めます。
- 態度:大声で呼びかけるのではなく、あくまで「静かに立ち止まり、存在感で歩行を防ぐ」ことが基本です。
通せんぼの人・1日の様子とは?
例えば、名古屋市内の主要駅(栄駅)では次のような一日。
時間帯 | 活動内容 |
---|---|
9:00 | 集合、活動説明、ユニフォーム着用 |
9:30 | エスカレーター右側に立ち啓発開始 |
11:30 | 小休憩(10~15分) |
11:45 | 活動再開、啓発ポスターを持って移動 |
13:00 | 昼休憩(30~60分) |
14:00 | 活動再開、後半の部 |
15:30 | 小休憩 |
15:45 | 最終啓発、撤収準備 |
16:00 | 活動終了、ユニフォーム返却、解散 |
通せんぼの人は“ただの壁”ではなく「安全の象徴」
通せんぼの人の活動は「邪魔」と見られることもありますが、目的はあくまで事故防止です。
こうした事故防止のため、通せんぼの人は「人間ポスター」として「歩かない文化」を視覚的に定着させています。
なぜ「立ち止まり条例」が必要?背景と目的
埼玉県は2021年に全国初の「立ち止まり条例」を制定。
背景には、エスカレーター事故の多発があります。
特に駅構内では混雑時に歩行者同士が衝突し、転倒やケガのリスクが高まることから、条例化が進められました。
条例施行後、商業施設では一定の成果が出ましたが、駅では「右側を歩く文化」が根強く、定着に時間がかかる課題も見えています。
過去の事例
国内では、東京都や大阪府などで過去に「エスカレーター立ち止まり推奨」キャンペーンが実施されました。
ロンドンでも2015年、交通局が片側立ち止まり推奨を試みた結果、混雑緩和と安全性向上が認められています。
ただし、日本では啓発のみでは習慣が変わりにくく、実際に「通せんぼ役」を置く取り組みが注目されています。
国内の過去事例
日本では、エスカレーターで「片側を空けて歩く」習慣が根付いていますが、これが事故の原因となることも指摘されていました。
そのため、以下のような過去の施策が行われています。
- 埼玉県(2021年):全国初となる「エスカレーター安全利用の促進に関する条例」を制定。商業施設などでは効果があったものの、駅での定着には課題が残りました。
- 大阪府(2019年):民間の駅施設で「エスカレーターでは立ち止まろう」というポスター掲示や声掛け活動が行われたことがあります。
- 東京都(2010年代):一部鉄道会社(例:東京メトロ)が「エスカレーターでは立ち止まろう」キャンペーンを展開。構内放送やポスターを用いた啓発活動が行われました。
海外の事例|ロンドンなどの立ち止まり推奨
- ロンドン(2015年):ロンドン交通局(TfL)がエスカレーターでの「片側空け・歩行文化」を見直す実験を実施。エスカレーターを片側立ち止まりにしたところ、混雑緩和や乗客の安全性向上につながったとされています。
- オーストラリア・シドニー:一部駅で「エスカレーター歩行禁止」の啓発キャンペーンを実施。利用者へのアンケートで「事故リスクの軽減効果」を認める声もありました。
過去施策の成果と課題
過去の取り組みから分かったのは
- 啓発活動のみでは定着が難しい:ポスターや放送だけでは利用者の習慣を変えるのは難しく、「実際に立ち止まる人の存在」が重要だとされます。
- 混雑時のストレス問題:通勤時間帯などに急ぐ人が多い場合、「立ち止まる文化」が逆に混雑やイライラを招くことも。
- 持続的な取り組みの必要性:一時的なキャンペーンではなく、条例や啓発活動の継続が求められる点です。
通せんぼの人の効果と課題
名古屋市の消費生活課によると、「なごやか立ち止まり隊」の導入後、歩行者率は条例施行前の80%から90%超に減少。
一方で、「急ぐ人にとってはストレス」「駅の混雑時には逆効果」という課題も。これに対し、今後は利用者の意識改革と持続的な啓発活動が求められます。
安全啓発の新手法としての可能性
エスカレーター安全利用の定着には、「通せんぼの人」だけでなく、駅全体の動線設計や広報活動、教育が必要です。
今後は、デジタル掲示板や自動音声案内、AI技術を活用した行動分析など、テクノロジーの導入が期待されます。
例えば、ロンドンの事例を参考にし、段階的に啓発とインフラ整備を進めることで、持続可能な安全文化が築けるでしょう。
まとめ
通せんぼの人は、エスカレーター安全対策の新しい取り組みとして、一定の効果を発揮しています。
啓発だけではなかなか定着しない習慣に対し、実際に右側に立ち続けることで、利用者の意識変革を促しています。
例えば、名古屋市の「なごやか立ち止まり隊」では、歩行者率が条例施行前の80%から90%以上に減少しました。
ただし、これを長期的に定着させるには、利用者の意識改革と技術を活用した新たな施策が求められます。
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