2025年6月、「子ども・子育て支援金制度」の詳細が報道された直後から、SNS—特にX(旧Twitter)上で急速に拡散されたのが「偽装結婚」というワードです。
「独身税」とも揶揄されるこの制度に対し、「それなら形式上だけでも結婚した方が得なのでは?」といった投稿が急増。
一部のユーザーは制度回避の“手段”として、冗談半分ながら真剣にこの選択肢を語り始めています。
- 「独身税」報道後、Xで“偽装結婚”という言葉が急増し、制度回避を模索する声も広がっている
- 支援金の負担回避は難しいが、婚姻によって制度上有利になるケースが存在する
- 過去にも給付金や保険制度をめぐり“形式的婚姻”が利用された事例がある
- 制度の不信や“得する結婚”という印象が、社会制度の信頼性や倫理観を損なう恐れがある
急上昇する検索ワード「偽装結婚」

これまで「偽装結婚」と言えば、在留資格目的の不正行為を指すものでした。しかし現在では、次のような声がネット上で目立ち始めています。
- 「独身だと支援金払うなら、友達と籍だけ入れる?」
- 「既婚だと恩恵あるのに、独身は損しかしない」
- 「書類上の結婚で支援金免除されるなら試してみたい」
こうした投稿にはユーモアも含まれていますが、制度設計が「結婚していた方が得」と思わせる構造を生んでしまっている点は見過ごせません。
偽装結婚で支援金負担は回避できるのか?
▷ 結論:完全回避は難しいが、制度上の有利さは存在
支援金は医療保険加入者1人ごとに課される仕組みのため、形式的な婚姻関係が直接的な免除につながるとは限りません。
しかし、以下のような”隙間”を狙う意図が生まれてもおかしくありません。
- 自治体によっては、世帯合算や所得分配による負担調整が可能な場合がある
- 婚姻関係を結ぶことで、児童手当や扶養控除、税制面での恩恵が変化する
そのため、「制度上有利に見える」「結婚の方がトク」という認識が、一部の人々の“偽装結婚”へのインセンティブとなり得るのです。
制度回避目的の結婚は過去にも
「制度回避としての婚姻」は今回が初めてではありません。以下のような前例があります。
- 2000年代前半: 外国人との在留資格維持目的での偽装結婚(入管法違反で摘発)
- 2010年代: 保険料回避のため、親の扶養に入る目的での形式的結婚が話題に
- 2020年〜コロナ禍: 給付金対象世帯に入るための駆け込み婚が多数報道された
制度への信頼を損なわないために
「独身税」というフレーズが独り歩きし、「偽装結婚で逃げられる」と思わせてしまう設計では、制度そのものの正当性が揺らぎます。
- 対象者区分や負担計算の仕組みを、明確かつ平易に説明する
- 婚姻の有無による優遇・免除の範囲を透明化する
- 偽装結婚による不正回避を防ぐための運用基準・罰則を示す
制度への信頼性を保つには、”抜け道”の存在を曖昧にせず、正確な情報提供と公平な制度設計が不可欠です。
結婚=損をしない選択?その先にあるリスク
今回の支援金制度をめぐる議論は、現代の日本社会における制度不信と経済的脆弱さを象徴しています。
「結婚しておけば損しない」「独身は罰金を払う構造」—こうした風潮が広がることは、結婚制度の根幹を揺るがしかねません。
税制や社会保障は、私たちの生き方そのものに影響するものです。
それが“偽りの選択”を促す制度であってはならず、制度が社会に与える倫理的・実質的インパクトを今こそ真剣に見直す必要があります。
制度の意図と現実がズレたとき、見直すべきは「選ぶ側」ではなく「設計する側」です。
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